真珠の巻きと照りのこと
昨日のブログで「珠の巻き(真珠層)もしっかりあり、強い照り(光沢)もあります」と書きました。巻きや照り。。。何気なく使いましたが、言ってみれば「真珠業界の業界用語」です。分かりにくいのではないかしらと、カッコを付けて真珠層とか光沢と書いたのですが、真珠層っていうのも簡単に使って良いものかとシバタは思いました。
なので今更なんですが。。。今はググれば簡単に分かったりもいたしますが。。。今一度、真珠の巻きと照りのことを少々書こうかなと思います。
よくある風景の写真ですが、「海に沿った山々」この景色こそが美しい真珠を作る基本になります。
海岸線に沿った山々からのたくさんの栄養は、海に流れて海中のプランクトンを増やします。このプランクトンこそがアコヤ貝の餌となり、良質な真珠が育ちます。
真珠の核を入れて真珠を育てるアコヤ貝のことを母貝と言います。母貝は最初から母貝ではなく、稚貝と呼ばれている貝が核入れできる大きさに育って母貝になります(どんな世界でも母になるのは大変ざます)
この稚貝を母貝に育てるのは、真珠の養殖業者ではなく母貝業者。稚貝の大きさは、なんと針の穴ほどしかありません。それを2年半ほどかけて、10cmくらいの母貝にしていきます。
(ここで、ちょっと話がそれますが。2年ほど前にアコヤ貝の稚貝の大量死が度々ニュースでも取り上げられました。海水温上昇などが原因らしいです。ニュースを見て稚貝がと言われても、なかなかピンとこないかもしれませんが、稚貝がダメになると母貝の不足になる。つまり真珠の養殖に影響が出てきます)
母貝に成長したアコヤ貝は、まず養殖場の海に馴染ませます。それから一個一個を手作業でアコヤ貝に真珠の核を入れていきます。核は二枚貝の殻を丸く削って加工したものです。その核と一緒に、ピースと呼ばれる小さく切った貝の外套膜(真珠層を分泌する働きがある)を入れます。このピースがアコヤ貝の中で細胞分裂して真珠層を核の周りに作っていきます。これが巻きです。核の周りを真珠の層がレンガのように何層も何層にも積み重なって珠を形成していくのです。
核入れしたアコヤ貝は、核を落ち着かせるために一か月ほどは内海の波の静かな海中に入れられます。それから専用の網に入れられ外海に出して真珠を大きくしていきます。網の清掃や水温に気をつけながら、アコヤ貝を見守ります。
そして1年~2年後、水温が下がる冬に浜揚げをします。これは寒いと貝の活動が少なくなり、真珠層の巻く速度がゆっくりになるからです。このような状態だと細かい微粒子の真珠層になります。つまり真珠の一番表面がきめ細やかになります。これが光沢、照りの強さになります。アコヤ貝は水温が高いと真珠層を巻き続けますが、この状態で浜揚げされた真珠は照りが鈍いものが多いのです。水温が下がって光沢に深みがまします。水温が高いと真珠層を巻き、下がることが光沢を作る。四季のある日本の海が美しいアコヤ真珠を生み出すのが分かります。
ですが、その特性に養殖業者さんたちの日々の丹精が加わってこそ、より品質の高い真珠が出来ます。シバタが取り扱っている宇和島の無調色真珠は越物という言い方をいたします。これは2年間海中で養殖した真珠のことです。つまり季節を2回重ねることで巻きを厚くします。巻きが厚いということは真珠層がたくさんあること。これは真珠の経年劣化を防いでくれます。
こうして浜揚げされたアコヤ貝の中から真珠の珠を取り出していきます。