6月の新しい誕生石 アレキサンドライト
今朝のシバタの店前のアナベル
今年もワサワサと白く花を咲かせてくれそうです。この花が咲くと「あぁぁ梅雨だな」と思うのですが、気が付けば5月も終わり。来週は6月ですね。そこで、今日は6月の誕生石のニューフェイス『アレキサンドライト』のご紹介をいたします。
昨年末、63年ぶりに誕生石に新しい宝石が加わりました。
6月の誕生石と言えば「真珠」と「ムーンストーン」なんとなく、しっとりとした上品な輝きが共通しているような印象を私は感じておりましたが、新しく加わった「アレキサンドライト」は光源で色が変化するという特徴を持つ、これまでの6月の石とはちょっと違うイメージを持っています。
アレキサンドライトは光源で色が変わる宝石です。
上は太陽光で、下は白熱電球のしたで写真を撮りました。上は青緑、下は赤紫。同じ石なんですが色が違います。
なぜ、アレキサンドライトは光によって色を変えるのでしょうか。
少々理科的なお話です。
アレキサンドライトはクリソベリルという鉱物です。クリソベリルは市場にあまり出回らないので、聞いたことがないかもしれませんが、ミント色や黄色系のとてもきれいな石です。古くから採掘されていて、ギリシャ語の黄金を表わす言葉「クリソス」と緑を意味する「ベリル」から名前がつきました。和名を金緑石と言います。19世紀のヨーロッパで人気が出て、アンティークジュエリーで使われているのをみることが出来ます。
このクリソベリルの変種がアレキサンドライトです。変種っていうと難しく思いますが、クリソベリルの変わり者ってイメージしてくださいね(ちなみに猫目石のクリソベリルキャッツアイも同じクリソベリルの変種です)
地中でクリソベリルが結晶していく途中にクロム元素が混じることがあります。このクロムは、コランダムではルビーを赤に、ベリルではエメラルドの緑色を出す役目をしています。クリソベリルに入り込んだクロムは光の黄橙色系の色を吸収し、青緑系と赤紫系の色を反射するように働きます。
この働きが温度の違う光源(k ケルビンという単位)をそれぞれアレキサンドライトに当てると
光源が太陽や蛍光灯(色温度が5000k以上)では青や緑を反射するので緑色に見え、
ろうそくや白熱灯(色温度が5000k以下)では赤紫に見える。こんな摩訶不思議なことになります。
石のクロムの含有量が高いほど、クリアにカラーチェンジをします。
1830年にロシアを南北に縦断するウラル鉱山のタコバヤ川の流域で、初めてアレキサンドライトは発見されました。宝石界では比較的、歴史の浅い宝石です。この石を掘り当てた鉱夫はウラル鉱山がエメラルド鉱山だっため、最初はエメラルドをゲットした!と思ったのです。でも夜間ろうそくの下で見たら赤色に変わっていた。。。( ゚Д゚) 当時の科学では解明が出来ず、まさに超常現象のようだった。そんな話が残っています。
(お山のたたりだぁぁって思ったに違いない。。。そんな妄想がふくらむワタクシです)
その名残でもないのでしょうが、推理小説のトリックにも使われています。現場に落ちていたのは赤い石の指輪だが、目撃情報は緑色の指輪だった。。。こんな感じですね。
さて、ここからはアレキサンドライトのネーミングの由来です。
アレキサンドライトは、発見された1830年4月30日にロシアの皇帝ニコライ1世に献上されました。その日は皇太子アレクサンドルの12歳の誕生日。そこからアレキサンドライトの名前が付けられました。ナポレオンを破ったロシアの軍服が赤と緑だったことからも、ロシアの国では大人気の宝石になります。
また、もう一つの逸話では、ニコライ皇帝の兄アレキサンダー一世はこの軍服を正装にしていました。ニコライはお兄さんを尊敬していて、この石を見た時に「兄の生まれ変わりだぁぁ」と感じた。嘘か誠かわかりませんが、そんな話も残っています。いずれにせよ皇帝に関係している宝石なので、ロシアではアレキサンドライトは皇帝の宝石と呼ばれています。ロシアでは幸運を呼ぶ石とされていますが、アレキサンドライトを一つだけ着けると孤独になるなんてことも言われています。(いつの世も権力者は実は孤独。。。)
現在のアレキサンドライトの産地はブラジルやスリランカ、タンザニアです。ロシアの鉱山は堀り尽くして一度は閉山しましたが、ごくごく少量の高品質なアレキサンドライトが採れます。赤や緑の色目はエメラルドやルビーの色目には及ばないと言われますが、変色する石として5大宝石(ダイヤ・ルビー・サファイヤ・エメラルド・アレキ)の一つに数えられています。よく色石にみられる加熱処理や樹脂加工をアレキに施すと、この変色の特徴を失います。なので、ほとんどのアレキサンドライトは色の処理がされていません。無処理の石としての価値も合わせ持っています。明確にカラーチェンジするほど評価が高くなり、あまり大きい石が採れません。なので1ctを超えるアレキサンドライトは高値で取引されます。もしシバタがそんなアレキをゲット出来たとしたら、硬度もあるので指輪に仕立てて手元で色が変わるのをほくそ笑みながら楽しむ。こんな野望を持っております。(現実は厳しいけどね。。)
石言葉としては「高貴・誕生・光栄」「秘めた思い」などあり、二面性を持っていることから双子座の守護石ともされています。結婚45周年はサファイヤ婚ですが、金緑婚!アレキサンドライトという説もあります。ググってみれば、ホントはサファイヤ婚は23年目。スターサファイヤが65年目とも書いてもありました。今日のブログは6月の誕生石としてアレキサンドライトをご紹介しましたが、イタリアでは10月の誕生石にもなっています。けっこうアバウトだなぁって、こう見えて意外と神経質なシバタはモヤモヤとした気分でもありますが、プレゼントされる機会が多くなったと考えれば、何でもOKかもって思います。