時計のこと
時計屋さん
竹鼻の商店街に店があった頃は、それが我が家の呼ばれかたでした。義父が戦後におこした店は時計屋としてスタートしました。
何度もチラシにも書きましたが、当時の『時計』は、憧れの持ち物。お給料を貯めて頑張って購入するもの。そして、それは大切にメンテナンスをしながら使い続けるものでした。今のように安価なものはなく、一人の人間が何個も時計を所有する時代ではありませんでした。なので、「時計を所有する」ことは、今とは全然違う意味であったと思います。
家の中心には、時刻の目安になる柱時計があって、ネジをカリカリと巻きました。新婚のおうちには、鎖で引っ張る鳩時計を友人達がプレゼントしたものです。
6月10日 時の記念日。
毎年、この日が近づいてくると、この数十年で変わった時計の意味を必ず考えます。 もちろん、ノスタルジックな気持ちばかりではありません。ものを所有することの意味自体が、時代で大きく変わっていくのは当たり前のこと。自分の年代で必要なものも変化していきます。そして断捨離や終活。ものをどう処分するかも考えます。私も切実にそれを感じます。
「デンチ交換出来ますか?」「思い出の時計なので修理したいのですが…」そんなお問い合わせが年々増えて来ました。
時代や価値観が変わっていっても、物を大切に使い続けること。その気持ちに出来る限りお応えしたい…そんな時計屋でありたいと思っています。