宝飾品の技法のお話を少しだけ。。
先日のブログに螺鈿と象嵌のことを少しだけ書きましたが、もう少しだけ…説明を加えたいと思います。クドクド説明が続きますが、よろしければお付き合いくださいね
①象嵌とは 金属・陶磁器・牙・木材などに模様を刻み込み、その刻み込んだ中に金やプラチナや銀などの材料を嵌め込んでいくことです。
この指輪には象嵌が施されています。象嵌の技法の中でもピクウェ(pique)と呼ばれれる特別な象嵌の技法です。ピクウェとは、べっ甲・象牙・象牙・真珠の母貝などの有機素材(主に生物界に存在する植物・動物の構成物質のこと)の素材の表面に、貴金属で作られたデザイン模様を嵌め込んでいく技法です。ピクウェの語源はフランス語のpiquer。突き刺す。あるいはピンで留めるという意味です。ピクウェの技法は、もともとは中世フランスで生まれました。イギリスやオランダに伝わっていきましたが、その技法は19世紀末には消滅してしまいます。この指輪を作ったのは塩島敏彦氏。この日本でピクウェの技法を甦させた…現在では世界でたった一人のピクウェ作家です。山梨にある工房に何度もお邪魔しましたが、数ミリ以下の純金や純プラチナを真珠の母貝に嵌め込む現場は息をするのも躊躇われるほどの繊細な作業を繰り返していました。シバタにも、この写真の指輪の他にブローチなど数点の塩島先生の作品がございます。いつでもご覧いただけますので、どうぞお気軽にお申し付けください。
②螺鈿は、貝殻の内側・虹色光沢を持った真珠層の部分を切り出した板状の素材を木や金属に漆で貼り付けていく技法です。漆塗りを何度となく繰り返し、その都度乾燥させます。貼った貝と貝との隙間がしっかり埋まるまで、その作業は続いていきます。完全に乾いたら、炭やスポンジ磁石で貝が表面に出てくるまで研いでいきます。
余談ですが、漆の工芸と聞くと『蒔絵』を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。蒔絵は漆で絵や文様を描き、漆が固まらないうちに金や銀の金属粉を蒔いて表面に付着させ装飾していきます。粉を蒔いて絵にするから『蒔絵』と言います。『螺鈿』は貝(螺)を散りばめる(鈿)技法です。素材も工程も違いますが、平安時代から鎌倉時代に成立した『蒔絵螺鈿』と言う技法があります。蒔絵によって描かれた文様の中に螺鈿の文様を組み込む表現で、手箱や唐櫃に用いられました。
偶然の産物『宝石』と人間の『技術』が出会った宝飾品。またシバタでご紹介していければなぁと思っています。